【農地手続】農業をしていない人に農地を贈与できるか?

農業をしていない人、例えば会社員をしている人等に農地を贈与することはできるのでしょうか?

結論から言うと難しいでしょう。

ケースとして以下のような事が考えられると思います。

高齢者が農地を所有しており、引退を考えていて農地を一人息子に贈与したいと考えているが、息子は会社員で農業を継ぐ気がない等です。

農地を贈与する場合は、農地法の許可が必要となります。

第三条 

農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。

農地法

今回のケースの場合、一人息子は農業を継ぐ気がないので、農地を取得しても農業を行うことはないでしょう。

そうなると、農地を取得する資格がないことになるので、一人息子が農地を自分の土地にすることはできません。

農地を取得する資格とは主に以下のような内容です。

  • 権利を有している全ての農地について、効率的に利用して耕作等を行うと認められるか?
  • 農地の権利取得後に、耕作等に必要な農作業に常時従事(年間150日以上)すると認められるか?
  • 農地の集団化、農作業の効率化、周辺農家と調和できるか?

等です。

ただし、一人息子が将来、農業を営むことになり、農地を取得する資格を得られれば、農地法の許可等も可能になると考えられます。
その時は、一人息子は贈与によって農地所有権を取得することになります。

今の状態で、息子との贈与契約ができないかというと、農地法の許可等を条件としての贈与契約は有効です。ただ、今の状態で許可等がされないので、すぐに農地所有権が息子に移転することはありません。

この点、「相続」の場合には、農業に全く興味のない会社員の相続人であったしても農地法の許可を得ることなく農地を相続できるとされています。

つまり親から子に農地の所有権を移転したい場合、農地法の許可については「贈与なら必要」、「相続なら不要」ということです。(ただし相続でも届出は必要です。)

余談ですが、息子が農地を取得できる資格を得たり、あるいは農地が宅地転用可能となったりした場合、その時から10年間で贈与を理由とする所有権移転登記請求権は時効で消滅すると考えられます。


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