【農地】農地と相続と納税の猶予

農地には、農業を営んでいた被相続人(亡くなった方)から相続人が農地等を相続や遺贈によって取得し、農業を営む場合には、相続税額の納税が猶予される「農地等の納税猶予の特例」という制度があります。

この特例を受ける農地等を「特例農地」、猶予される相続税額のことを「農地等納税猶予税額」といいます。

特例農地を相続した者が死亡した場合(死亡の時まで営農していた)や特例農地を農業後継者に生前一括贈与した場合には、納税自体が免除となります。(一括贈与を受けた者が営農する場合、その者に対しては納税の猶予が適用されます)

特例を受けるための要件

被相続人(亡くなった方)と相続人の特例を受けるための要件は以下の通りです。

被相続人(亡くなった方)の要件

  1. 死亡の日まで農業を営んでいた人
  2. 農地等の生前一括贈与をした人
  3. 死亡の日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人または農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため貸借権等の設定による貸し付けをし、税務署長に届出をした人
  4. 死亡の日まで特定貸付け(市民農園等)を行っていた人

農業を営んでいたとは、耕作行為を反復、継続して行っていたことを言います。耕作による生産物を自家消費に充てている場合または、会社、官庁等に勤務するなど他に職を有し若しくはほかに主たる事業を有している場合であっても、耕作を反復継続している場合は、農業を営むものに該当します。

また、死亡の日まで農業を営んでいない場合でも、被相続人が老齢または衰弱のため、生前において、その者と住居および生計を一にする親族ならびにその者が行っていた耕作事業に従事していたその他の2親等内の親族に農業経営を移譲していた場合等は農業を営んでいた者に含まれます。

相続人の要件

相続人の要件は以下の通りです。

相続税の納税猶予の特定の適用を受けることのできる相続人は、相続税の申告書の提出期限までに相続または遺贈により対象農地等を取得、農業経営を開始し、その後引き続き当該農業経営を行うと認められるもので、農業委員会が証明した者。

相続税の納税猶予に関する適格者証明書

相続税の納税猶予の特例の適用を受けるためには、当該農地を管轄する農業委員会が発行する「相続税の納税猶予に関する適格者証明書」が必要となります。

多くの農業委員会では、証明書の発行申請 → 現地確認 → 農業委員会による決議を経て証明書の発行となります。

多くの農業委員会の開催頻度は月に1回ですので、申請から発行まで1カ月以上かかる場合もあり、申請した月に証明書が発行されない場合もあるので、遅くとも申告期限の3カ月前までには適格者証明の申請をするほうがよいでしょう。また、申請までに特例農地について分割協議を終わらせなければなりません。

証明書発行の際に必要となる書類

証明書発行の際に必要となる書類は以下の通りです。各農業委員会によって違いがありますので、事前に確認するほうがよいでしょう。

  1. 相続税の納税猶予に関する適格者証明書証明願
  2. 特例適用農地等の明細書
  3. 土地登記事項証明書
  4. 納税猶予の特例適用の農地等該当証明書
  5. 現地案内図
  6. 遺産分割協議書
    特例農地に係る相続登記が完了していない場合必要
  7. 被相続人の出生から死亡までの除籍謄本、改製原戸籍謄本等または法定相続情報一覧図
    特例農地に係る相続登記が完了していない場合必要

農地等納税猶予税額を納付しなければならなくなる場合

農地等納税猶予税額を納付しなければならない場合があります。これを猶予期限の確定(猶予の取消)と言います。猶予期限が確定してしまうと、その農地等納税猶予税額の全部または一部を納付しなければならなくなります。

以下のようなケースに該当する場合は、猶予期限の確定となります。

  1. 特例農地等について譲渡等があった場合
    譲渡等には、譲渡、贈与もしくは転用のほか、地上権、永小作権、使用貸借による権利もしくは賃借権の設定もしくはこれらの権利の消滅または耕作の放棄も含まれます。
  2. 特例農地等に係る農業経営を廃止した場合
  3. 継続届出書の提出がなかった場合
  4. 生産緑地法の規定による買取りの申出等があった場合


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