民法第1050条
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
「特別の寄与」とは、2020年4月の民法改正で新たに出来た制度です。
改正前にも「寄与分」という制度があり、被相続人(亡くなった人)の財産の維持または形成に特別の寄与・貢献した者がいる場合、していない者より取得財産に考慮がなされるというものです。
しかし、「寄与分」の制度は、相続人のみに認められている制度です。
「特別の寄与」では、相続人以外の親族が対象となります。
(例えば被相続人の長男の嫁など)
趣旨としては、相続財産に対して権利行使できない相続人以外の親族と相続人間の不公平を修正することにあります。
要件
以下が要件となります。
- 被相続人の親族であること
(相続人、相続放棄をした者、相続欠格者、排除者は該当しない) - 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと
例:介護など - 被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと
例:事業の手伝いなど
効果
相続開始後、相続人に対して、特別寄与料の支払を請求できる。
特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時に有していた財産の価格から、遺贈の価格を控除した残額を超えることができない。
相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額にそれぞれの相続分を乗じた額を負担する。
(例えば、特別寄与料が30万円で、相続人が子3人(相続分はそれぞれ1/3)とすると、子はそれぞれ10万円づつ負担するとなる)
特別寄与料の支払
特別寄与料の支払については、当事者間で協議をして決定する。
協議ができない時や調わない場合は、家庭裁判所に対して、協議に代わる処分を請求することができる。
なお、家庭裁判所に対する協議に代わる審判の請求は、相続の開始および相続人を知った時から6か月、または相続開始の時から1年の期間制限がある。