民法第1046条

遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

遺留分侵害額請求とは、遺留分権利者のもらうことのできる財産が遺贈または贈与によって遺留分に満たないときに、遺留分を侵害している額に相当する金銭の支払いを請求する権利の事をいいます。

  • 遺留分権利者:兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者、子、直系尊属)
  • 遺贈:遺言によって財産を譲る事
  • 遺留分:相続人が法律上保障されている相続財産の一定割合の事

請求の相手

請求の相手は誰なのかというと、受遺者・受贈者です。

  • 受遺者:遺言により財産を受けた人
  • 受贈者:贈与により財産を受けた人

請求の方法

判例では、「意思表示があればよい」ということになっており、必ずしも裁判上の請求でなくてよいとなっています。

どのような意思表示かというと、判例は、

「全財産が一部の相続人に遺贈された場合において、遺留分侵害額請求を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく遺産分割協議の申入れをしたときは・・・その申入れには遺留分侵害額請求の意思表示が含まれるとした」

としています。

受遺者または受贈者の負担額

民法第1047条

受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第1042条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。

かっこ書きを取ると、

受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈又は贈与の目的の価額を限度として、遺留分侵害額を負担する。

となります。

ザックリ言うと、受遺者、受贈者が相続人でない誰かの場合は、もらった額の限度で、相続人なら個別遺留分を控除した残りの部分が負担の限度となります。といっています。

負担の順序

負担の順序は、

民法第1047条

 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。

 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。

受贈者より、受遺者が”先”。

後に贈与を受けた者が、先に贈与を受けた者より”先”

となっています。

遺留分侵害額請求の消滅

民法第1048条

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。