建設業許可の要件の一つに、「財産的基礎、金銭的信用を有すること」があります。

建築業法7条にはこうあります。

国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。

さらに同法7条第4号にはこうあります。

請負契約(第3条第1項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。

また、同法15条には

国土交通大臣又は都道府県知事は、特定建設業の許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。

とあり、同法15条第3号には

発注者との間の請負契約で、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有すること。

とされています。ちなみに政令で定める金額とは8000万円です。(建設業法施行令第5条の4)

建設工事を行うには、お金がかかります。
営業したり、人を雇ったり、資材を購入したり。

そこで、工事を請け負うだけの財産的基礎を有していることを要件の一つにしています。

また、特定建設業の許可を受けようとする場合、一般建設業の許可と比べて要件が厳しくなっています。
これは、特定建設業者は多くの下請負人を使って工事を行うことが一般的なため、下請け保護の観点から、そうなっています。

一般建設業と特定建設業の許可要件は次のようになっています。

一般建設業

次のいずれかに該当する必要があります。

  • 直前の決算において、自己資本の額500万円以上であること
  • 金融機関の預金残高証明書で、500万円以上の資金調達能力を証明できること(残高日が申請日前4週間以内の証明書が必要)
  • 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること(5年目の更新申請者は、この基準に適合するとみなされる)

特定建設業

次のすべてに該当する必要があります。

  • 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
  • 流動比率75%以上であること
  • 資本金の額2000万円以上であること
  • 自己資本の額4000万円以上であること

以下で各用語の補足説明をします。

  • 欠損の額とは
    • 法人にあっては貸借対照表の繰越利益剰余金がマイナスである場合に、その額が資本剰余金、利益準備金、任意積立金の合計額を上回る額をいいます。
    • 個人にあっては、貸借対照表の事業主損失が事業主仮勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金および準備金を加えた額を上回る額を言います。

繰越利益剰余金:会社ができてから、これまで蓄積してきた利益


資本剰余金:会社設立時等に株主から集めた資金等のうち、資本金とされなかったもの


利益準備金:利益剰余金の一部で会社法で積み立てることが義務付けられているもの(利益剰余金:会社の活動で得た利益のうち社内で留保しているもの)


任意積立金:企業が蓄積した利益のうち、「将来特定目的で使用したいので留保したい」(退職金など)と意思表示して積み立てるもの

事業主借:個人のお金を、事業用のお金として使ったもの

事業主貸:事業用のお金を、個人用のお金として使ったもの

引当金:将来の費用や、損失にそなえて事前に準備しておくお金

  • 流動比率とは
    • 流動資産(1年以内に現金化できる資産)を流動負債(1年以内に返済しなければいけない債務)で除して得た数値を百分率で表したものをいいます。
      流動比率とは言いかえれば、1年以内に返済すべきお金を流動資産で保有しているかを表している、とも言えます。

      つまり、会社の安全性がわかります。

  • 資本金とは
    • 法人にあっては、株式会社の払込資本金、持分会社等の出資金額をいいます。
    • 個人にあっては、期首資本金をいいます。(個人事業の資本金は「元入金」と言われ、あらかじめ用意した開業資金や準備金のことをいいます。)

  • 自己資本とは
    • 法人にあっては、貸借対照表における純資産の額をいいます。(純資産とは、資本金、利益剰余金、資本剰余金等の返済の必要がない資産のこと)
    • 個人にあっては、貸借対照表のおける期首資本金、事業主借勘定および事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金および準備金を加えた額をいいます。